削る順番を
間違えない
固定費の見直しは、「金額が大きい×手間が小さい」ものから着手するのが原則です。人件費から手をつけるのは最後です。
一度削ると翌月からずっと効くのが固定費の特徴です。だからこそ、変動費より優先度が高くなります。
着手の順序
2つの軸で並べると、やるべき順番が決まります。
金額 × 手間で並べる
①金額が大きく、手間が小さい。通信費、保険、リース、サブスクの棚卸し。まずここ。
②金額が大きいが、手間も大きい。賃料、設備。移転や契約変更が必要。
③金額が小さく、手間が小さい。電気、消耗品。効果は小さいが着手しやすい。
④人件費。最後。削ると回らなくなり、採用コストで戻ってきます。
実務上、①だけで年間の数十万円が動くことがあります。まずここを終わらせてから次に進んでください。
通信費
見直しの効果が出やすい代表格です。理由は「一度契約したまま放置されていることが多い」から。
確認する項目。
・回線の契約数と、実際に使っている数(使っていない回線が残っているケースは珍しくありません)
・1台あたりの月額
・2台目以降の料金体系(法人プランは複数台で単価が下がることがあります)
・工事の要否と初期費用
・契約期間と、途中解約の違約金
特に拠点を増やすとき・現場に持ち出すときは、工事が要らない回線かどうかで導入の速さが変わります。
法人プランの料金体系を確認する
2台目以降の初期費用や台数ごとの料金は公式サイトで確認できます。
- 掲載する料金は公式サイトの公表値です
- 契約条件は事業規模・利用状況で変わります
- 見積もりは無料です
備品は買うか借りるか
備品を買うと、購入費・保管場所・故障対応・処分費用がすべて自社に乗ります。
判断の軸は「使う期間」です。
数か月〜1年。レンタルが有利になりやすい。繁忙期だけ、イベント期間だけ、故障時の代替。
数年以上、恒常的に使う。購入が有利になりやすい。
見落とされやすいのが処分費用です。家電リサイクル法の対象になるものは、捨てるときに費用と手配が発生します。レンタルならここが回収に置き換わります。
買うなら、値段の階段を先に知ってください
同じ「買う」でも、値段によって経費にできるタイミングが変わります。階段は4段あります。
備品の取得価額で、経費にできるタイミングが変わる(法人・青色申告)
| 取得価額 | 扱い | 買った年に経費にできる額 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 少額の減価償却資産 | 全額 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産 | 3年で均等(1年に3分の1) |
| 20万円以上40万円未満 | 少額減価償却資産の特例(令和8年度改正で30万円未満から拡大) | 全額(年間合計300万円まで) |
| 40万円以上 | 通常の減価償却 | 法定耐用年数で按分(パソコンは4年) |
出典:国税庁タックスアンサー No.5403・No.5408、財務省「令和8年度税制改正の大綱」、耐用年数(器具・備品)表(パーソナルコンピュータ・サーバー用を除く=4年)。特例は青色申告書を提出する中小企業者等が対象で、常時使用する従業員数の要件があります。2026年9月18日に確認しました。
いちばん大事なのが3段目です。2026年(令和8年度)の税制改正で、30万円未満から40万円未満に引き上げられました。財務省の税制改正大綱に「対象となる減価償却資産の取得価額を40万円未満(現行:30万円未満)に引き上げる」と書かれています。適用期限も令和11年3月31日まで3年延長されました。
ここで注意してほしいことがあります。国税庁のタックスアンサー(No.5408)は、この記事を書いた2026年9月18日時点で、まだ「30万円未満」のままです。改正の反映が追いついていません。「30万円と書いてあるから無理だ」と自分で判断せず、取得日を伝えて顧問税理士か所轄の税務署に当ててください。
39万円のパソコンで、いくら変わるか
いちばん影響が出るのが、30万円台の備品です。これまでは4年に分けるしかなかった価格帯が、まるごと初年度の経費になります。
399,000円のパソコンを1台買ったとき、初年度の経費はいくらか(当サイト計算)
| 初年度に経費にできる額 | 2年目以降 | 初年度の法人税(15%)の差 | |
|---|---|---|---|
| 改正後(40万円未満=全額) | 399,000円 | 0円 | — |
| 改正前(30万円以上=4年で按分) | 99,750円 | 99,750円×3年 | — |
| 差 | 299,250円 | — | 44,888円 |
計算式:399,000円÷4年=99,750円(定額法・パソコンの法定耐用年数4年)。税の差は299,250円×15%(中小法人の年800万円以下の部分の法人税率、国税庁タックスアンサー No.5759)。地方税は含んでいません。年間の合計限度額300万円を超える分には使えません。当サイトの計算です。
1台で初年度の経費が299,250円違います。年800万円以下の所得にかかる法人税は15%なので、税だけで44,888円の差です。台数が増えれば、そのぶん効きます。ただし年間の合計は300万円までなので、399,000円のパソコンなら7台(2,793,000円)で枠を使い切ります。8台目からは通常の減価償却です。
そして「買うか借りるか」に戻ります。初年度に全額を経費にできるということは、その年の資金がそれだけ出ていくということでもあります。経費になる額と、手元から消える額は別です。利益が出ていない年に40万円の備品を買っても、経費にできるだけで、お金は戻ってきません。
法人向けレンタルの料金と期間を確認する
法人契約・家庭利用どちらも対応しています。料金は公式サイトの公表値です。
- 掲載する料金は公式サイトの公表値です
- 契約条件は事業規模・利用状況で変わります
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買うと決めたときの調達先
恒常的に使う什器(デスク・チェア・収納・会議テーブル)は、購入のほうが総額で有利になりやすい領域です。ここでの費用差は「どこで買うか」で決まります。
比べる軸は3つ。
①法人向けの価格・取引条件があるか。数量がまとまると単価が変わることがあります。
②中古・アウトレットの取り扱いがあるか。チェアや収納は中古の選択肢が現実的で、同じ予算で品質を上げられることがあります。
③配送・組立・設置の扱い。ここを自社でやると、人件費という形で結局コストが出ます。
法人向けの取り扱いと価格帯を見る
新品・中古の両方から探せます。掲載価格は公式サイトの公表値です。
- 掲載する料金は公式サイトの公表値です
- 契約条件は事業規模・利用状況で変わります
- 見積もりは無料です
取り扱いの幅は仕入先によって差があります。1社だけ見て決めないのが、備品でも回線でも同じ原則です。
什器の種類と法人向けの条件を見る
オフィス家具・什器をまとめて比較できます。条件は公式サイトで確認できます。
- 掲載する料金は公式サイトの公表値です
- 契約条件は事業規模・利用状況で変わります
- 見積もりは無料です
資金繰りとの関係
固定費の削減は効果が出るまでに時間がかかります。今月の支払いには間に合いません。
したがって、今の資金繰りが詰まっている場合は別の手が必要です。固定費の見直しは「来月以降を軽くする」施策であって、今日の支払いを埋めるものではありません。
売掛金があるなら、入金を前倒しする手段があります。→ 資金繰りとの使い分け/通信費の見直し手順
請求書で調達できる額を無料で見積もる
売掛債権があれば、入金を前倒しできる場合があります。オンラインで見積もりできます。
- 掲載する料金は公式サイトの公表値です
- 契約条件は事業規模・利用状況で変わります
- 見積もりは無料です
固定費を、削減の効きやすさで並べる
| 費目 | 見直しの手間 | 効果が出るまで | 削減の効きやすさ | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 通信(携帯・回線) | 中 | 1〜2か月 | 高い | 契約期間の縛りと解約金 |
| オフィス備品 | 低(買い方を変えるだけ) | 即時 | 中 | 安さだけで選ぶと買い替えが早まる |
| 車両関連 | 中 | 1か月 | 中〜高 | 管理コストの削減も含めて評価する |
| 賃料 | 高 | 数か月〜 | 最も高い | 移転費用と業務停止の影響が大きい |
| 保険 | 中 | 更新時 | 中 | 補償を削りすぎると事故時に影響 |
効果の大きい順に手を付けると失敗します。手間が小さく、戻せるものから着手するのが実務的です。賃料は効果が最大ですが、判断を誤ったときの影響も最大です。
固定費を見直す順序
- ① 直近12か月の支出を費目別に出す感覚ではなく実額で並べます。ここを飛ばすと、削る場所を間違えます。
- ② 契約期間と更新月を一覧にする解約金が発生する時期に動くと、削減分が消えます。更新月に合わせて動くのが基本です。
- ③ 戻せるものから着手する備品の買い方、通信の契約。失敗しても戻せる範囲から始めます。
- ④ 効果を1か月後に実測する請求書で確認します。想定と違えば、原因を特定してから次に進みます。
- ⑤ 戻せないもの(賃料・人員)は最後に検討するここは業務への影響が大きいため、他を終えてから判断します。
契約を見直す前に確認する項目
- 現在の契約期間と、次の更新月
- 中途解約時の違約金と、その計算方法
- 現在の使用実績(通信量、稼働時間など)
- 乗り換えにかかる初期費用と作業時間
- 業務が止まる時間があるか、あるならどれくらいか
- 元に戻せるかどうか
よくある失敗と、その避け方
効果の大きい費目から手を付けて、業務の停滞を招いた
賃料や人員は効果が大きい反面、戻せません。手間が小さく戻せるものから着手するほうが、結果的に早く進みます。
更新月を確認せずに乗り換え、違約金で相殺された
削減額より違約金が大きければ、動いた意味がなくなります。更新月を起点に計画を立ててください。
使用実績を見ずにプランを下げ、業務に支障が出た
実績に対して余裕がなさすぎるプランは、結局上位に戻すことになります。実測値を基準にしてください。
削減額を請求書で確認しなかった
想定と実額がずれることは珍しくありません。1か月後に必ず突き合わせてください。
よくある疑問
固定費の見直しは、どこから始めるべきですか。
効果の大きさではなく、手間が小さく、失敗しても戻せるものから始めてください。備品の買い方や通信契約がこれにあたります。
賃料や人員は効果が最大ですが、判断を誤ったときの影響も最大です。他を終えてからの検討になります。
法人向けの契約は、個人向けと何が違いますか。
請求がまとまる、管理者が一括で設定できる、経費処理が簡単になる、といった管理上の違いがあります。単価だけを比べると、この部分が評価から抜け落ちます。
台数が増えるほど、管理の手間が費用として効いてきます。
何台からまとめる意味が出ますか。
台数そのものより、管理に使っている時間で判断してください。1台ずつ精算している状態が続いているなら、台数が少なくても効果は出ます。
見直しの効果は、いつ確認できますか。
通常は次の請求書からです。日割りの計算が入る月は判断しにくいため、切り替え月の翌月で確認すると分かりやすくなります。
契約期間の縛りは、避けるべきですか。
一概には言えません。縛りがある代わりに単価が下がる契約もあります。その期間、事業の形が変わらない見込みがあるかで判断してください。
移転や人員の増減が見込まれる時期なら、縛りのない契約のほうが柔軟です。
備品は買うのと借りるの、どちらがよいですか。
使う期間で決まります。長く使うものは購入、入れ替えが読めないものや一時的に必要なものは借りるほうが合理的です。
あわせて、廃棄の手間と費用も比較に入れてください。ここが抜けると、購入の総額を過小評価します。
削減した固定費は、どこに回すべきですか。
まず手元資金に残すのが基本です。固定費の削減は、単月では小さくても、年間では累積します。
そのうえで、売上に直結する投資に回すかどうかを、別の判断として行ってください。
見直しの効果を、着手前に見積もる
- ① 現在の年間支出(費目ごと)円/年
- ② 見直し後の年間支出(見積もりベース)円/年
- ③ ① − ② = 年間の削減額円
- ④ 乗り換えの初期費用・違約金円
- ⑤ 作業にかかる時間 × 時間あたりの人件費円
- ⑥ ③ − ④ − ⑤ = 初年度の実質効果円
⑥がマイナスなら、その年に動く意味はありません。更新月まで待つ判断のほうが合理的です。
状況別の判断
同じ「固定費を下げたい」でも、時期と状況で打つべき手が変わります。
創業1年以内・支出の全体像がまだ見えていない
削減より先に、費目別に並べることが優先です。実額が分からない状態で削ると、必要なものを削ってしまいます。
まず12か月ぶんの支出を整理してください。
契約の更新月が半年以上先
今動くと違約金で相殺される可能性があります。更新月に合わせて準備を進めるほうが、実質効果が大きくなります。
その間に、見積もりの取得と比較を済ませておきます。
従業員が増えて、通信費が読めなくなってきた
個人契約の集合になっていると、単価も管理も最適化できません。法人契約にまとめると、請求と設定が一本化されます。
台数が増えるほど、管理の手間が費用として効いてきます。
資金繰りが厳しく、すぐに効果がほしい
固定費の削減は、効果が出るまで1〜2か月かかります。それより早く必要なら、支払サイトの調整や、入金の前倒しを検討する場面です。
固定費の見直しは、並行して進める中期の施策として位置づけてください。
よくある誤解
「効果の大きい費目から手を付けるべき」
賃料や人員は効果が大きい反面、戻せません。手間が小さく戻せるものから着手するほうが、結果的に早く進みます。
「安いプランに変えれば必ず得」
違約金と乗り換えの作業時間を差し引くと、初年度はマイナスになることがあります。更新月まで待つ判断のほうが合理的な場合があります。
「単価が同じなら法人契約でも変わらない」
請求がまとまる、管理者が一括で設定できる、といった管理上の違いがあります。台数が増えるほど、この差が費用として効いてきます。
判断の流れ(まとめ)
順序は「12か月の実額を費目別に出す」→「契約期間と更新月の一覧」→「戻せるものから着手」→「1か月後に請求書で実測」→「戻せないものは最後」です。感覚ではなく実額で並べないと、削る場所を間違えます。更新月を起点に計画を立てれば、違約金で削減分が消えることを避けられます。効果は必ず請求書で突き合わせてください。想定と実額がずれることは珍しくありません。
一次情報の確認先
このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。