水の管理は、頻度が5段階に分かれている
延べ面積3,000平方メートル以上の事務所ビルは建築物衛生法の特定建築物です。水の管理には7日・6か月・1年・3年・毎年の測定期間という5つの頻度があり、どれか1つを覚えるだけでは足りません。しかも水源が水道か地下水かで、やることが変わります。
本サイトは条文と公表資料の整理です。実施の体制・記録の残し方・立入検査の運用は自治体ごとに異なります。この建物で何がどこまで必要かは、所在地を管轄する保健所(環境衛生担当)に確認してください。業者の選定は、下に書いた登録の有無から見ていくのが早いです。
誰に頼むのか(登録を受けた業者かどうか)
建築物衛生法第12条の2は、次の8つの事業について「その営業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けることができる」と定めています。登録の有効期間は6年です(同条第4項)。
第12条の2第1項が挙げる8事業(条文の文言のまま)
| 号 | 条文の文言 | 通称 |
|---|---|---|
| 一 | 建築物における清掃を行う事業 | 建築物清掃業 |
| 二 | 建築物における空気環境の測定を行う事業 | 建築物空気環境測定業 |
| 三 | 建築物の空気調和用ダクトの清掃を行う事業 | 建築物空気調和用ダクト清掃業 |
| 四 | 建築物における飲料水の水質検査を行う事業 | 建築物飲料水水質検査業 |
| 五 | 建築物の飲料水の貯水槽の清掃を行う事業 | 建築物飲料水貯水槽清掃業 |
| 六 | 建築物の排水管の清掃を行う事業 | 建築物排水管清掃業 |
| 七 | 建築物におけるねずみその他の人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物として厚生労働省令で定める動物の防除を行う事業 | 建築物ねずみ昆虫等防除業 |
| 八 | 建築物における清掃、空気環境の調整及び測定、給水及び排水の管理並びに飲料水の水質検査であつて、建築物における衛生的環境の総合的管理に必要な厚生労働省令で定める程度のものを行う事業 | 建築物環境衛生総合管理業 |
出典:建築物における衛生的環境の確保に関する法律 第12条の2第1項(e-Gov法令検索で2026年9月17日に確認)。
見積りを取る前に、この2つをそのまま聞いてください。
業者に先に聞く2つ
| 聞く言葉 | この答えなら要注意 |
|---|---|
| 「都道府県知事の登録を受けていますか。登録番号を教えてください」 | 「登録は不要です」とだけ答え、番号を出さない |
| 「登録の有効期限はいつまでですか」(有効期間は6年) | 期限を把握していない。更新していない |
登録業者の一覧は、都道府県や政令市の環境衛生担当課が公表しています。保健所に「登録業者の一覧はありますか」と聞けば出てきます。
頻度の一覧
建築物衛生法施行規則第4条が定める頻度(2026年9月13日確認)
| 頻度 | やること | 条文 |
|---|---|---|
| 7日以内ごとに1回 | 遊離残留塩素の検査 | 第4条第1項第7号 |
| 6月以内ごとに1回 | 飲料水の水質検査(省令の表の指定された項目) | 第4条第1項第3号イ |
| 毎年、測定期間中に1回 | 省令の表中十の項、二十二〜三十二の項 | 第4条第1項第3号ロ |
| 1年以内ごとに1回 | 貯水槽の清掃 | 第4条第1項第7号 |
| 3年以内ごとに1回 | 省令の表中十四の項ほか(地下水を水源とする場合) | 第4条第1項第4号ニ |
出典:建築物衛生法施行規則第4条。測定期間は6月1日から9月30日までです。
7日以内ごとという頻度は、他の制度にはあまりない短さです。週に1回、誰がやるかを決めておかないと続きません。
この建物が特定建築物に当たるかどうかは、延べ面積3,000平方メートルが分かれ目です。→ 事務所が3,000㎡を超えたら保健所に届出
残留塩素は7日以内ごとに1回
第4条第1項第7号は1文です。
「遊離残留塩素の検査及び貯水槽の清掃を、それぞれ七日以内、一年以内ごとに一回、定期に、行うこと。」
保つべき濃度は第1号が定めています。
給水栓における遊離残留塩素の含有率(第4条第1項第1号)
| 区分 | 遊離残留塩素 | 結合残留塩素の場合 |
|---|---|---|
| 通常 | 百万分の〇・一以上(0.1ppm) | 百万分の〇・四以上(0.4ppm) |
| 病原生物に著しく汚染されるおそれがある場合など | 百万分の〇・二以上(0.2ppm) | 百万分の一・五以上(1.5ppm) |
出典:第4条第1項第1号。測るのは「給水栓における水」=蛇口の水です。
基準は「上限」ではなく「下限」です。塩素が薄くなりすぎないように保つ、という規定です。下限を下回ると消毒の効果が落ちます。
測る場所は「給水栓における水」です。貯水槽の中ではありません。末端の蛇口まで塩素が届いているかを見ます。
水源で変わる
第3号と第4号は、水源によって条文が分かれています。
水源で変わる水質検査(第4条第1項第3号・第4号)
| 水道・専用水道からの水だけが水源(第3号) | 地下水などを水源に含む(第4号) | |
|---|---|---|
| 給水を開始する前 | 定めなし | 省令の表の上欄に掲げるすべての事項について行う |
| 6月以内ごとに1回 | あり(一の項、二の項、六の項ほか) | あり(同じ項目) |
| 毎年、測定期間中に1回 | あり(十の項、二十二〜三十二の項) | あり(同じ項目) |
| 3年以内ごとに1回 | 定めなし | あり(十四の項、十六〜十九の項、二十一の項、四十六の項) |
出典:第4条第1項第3号・第4号。地下水を使う場合は、開始前の全項目検査と3年ごとの検査が加わります。
井戸を併用しているビルは、水道だけのビルより検査が2段階多くなります。「前の管理会社がやっていた頻度」をそのまま引き継ぐと、水源が変わったときに抜けます。
第6号は、地下水を使う場合の追加の注意も定めています。「特定建築物の周辺の井戸等における水質の変化その他の事情から判断して、当該飲料水について……基準に適合しないおそれがあるときは、……必要なものについて検査を行うこと。」周辺で何かあったら、定期の検査を待たずに調べる、という規定です。
貯水槽の清掃は1年以内ごとに1回
第7号の後半が貯水槽の清掃です。「一年以内ごとに一回、定期に、行うこと。」
第2号は、清掃とは別に日常の管理も求めています。「貯水槽の点検等有害物、汚水等によつて水が汚染されるのを防止するため必要な措置」
条文から読み取れる、貯水槽まわりでやること
- 1年以内ごとに1回の清掃(第7号)
- 点検など、汚染を防止するために必要な措置(第2号)
- 技術上の基準に従った設備の維持管理(第4条第2項。厚生労働大臣が別に定める)
「1年に1回」ではなく「1年以内ごとに1回」です。前回から1年を超えてはいけません。年度末にまとめようとして間隔が空くのが、よくある崩れ方です。
異常を認めたときと、危険を知ったとき
ここまでは日付で決まる話でした。第4条第1項には、日付とは関係なく動くことを求める号が2つあります。第5号と第8号です。どちらも「定期に」という言葉を使っていません。
定期の検査を予定どおりこなしていても、この2つに当たる場面が来たら、その場で別の対応が要ります。順番に見ます。
条文が定める2つの場面
水の状態に異常を認めたとき(第5号)
人の健康を害するおそれを知ったとき(第8号)
第8号は「直ちに」です。検査の結果を待ってから止めるのではありません。知った時点で止めて、関係者に知らせます。
「色、濁り、臭い、味」は器具がなくても分かるものです。条文は、日常の気づきを検査の入口として扱っています。
雑用水は別の条文
トイレの洗浄水や散水に使う水は「雑用水」で、第4条の2が別に定めています。
残留塩素の基準(0.1ppm以上、結合残留塩素なら0.4ppm以上)は飲料水と同じです。ただし第4条の2は、ただし書でこう定めています。
「旅館における浴用に供する水を供給する場合又は……雑用水を水道法第三条第二項に規定する水道事業の用に供する水道若しくは同条第六項に規定する専用水道から供給を受ける水のみを水源として供給する場合は、この限りでない。」
雑用水も水道水だけを使っているなら、この条文の措置は要りません。中水や井戸水を使っている場合に効いてくる規定です。
なお、水槽の有効容量の合計が10立方メートルを超えるビルは、建築物衛生法とは別に水道法の「簡易専用水道」にもなります。毎年1回以上、登録を受けた検査機関の検査を受ける義務が加わります。→ 貯水槽が10㎥を超えたら簡易専用水道/貯水槽の清掃は年1回か6か月か
空気のほうの測定は別の周期です。→ 事務所の空気環境測定は2か月に1回
よくある取りこぼし
残留塩素の検査を月1回でよいと思った
第4条第1項第7号は「七日以内」ごとに1回です。
残留塩素の基準を上限だと思った
「百万分の〇・一以上に保持するようにすること」。下限です。
貯水槽の中で残留塩素を測っていた
条文は「給水栓における水に含まれる遊離残留塩素」です。蛇口で測ります。
井戸を併用しているのに水道と同じ頻度でやっていた
第4号は、給水開始前の全項目検査と、3年以内ごとの検査を加えています。
貯水槽の清掃を年度単位で組んで間隔が空いた
「一年以内ごとに一回」。前回から1年を超えてはいけません。
水の異常に気づいたが、定期の検査を待った
第5号は、異常を認めたときに必要な項目の検査を行うこととしています。
健康被害のおそれを知ったが、原因を調べてから止めようとした
第8号は「直ちに給水を停止し」です。周知も同時に求められています。
トイレの水も飲料水と同じ検査をしていた
雑用水は第4条の2。水道水のみを水源とする場合は措置の対象外です。
確認に使った一次情報
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則 第4条(給水の管理)/第4条の2(雑用水に関する衛生上必要な措置等)e-Gov法令検索
- 同 施行令 第1条(特定建築物)/第2条第2号(給水及び排水の管理)e-Gov法令検索
2026年9月13日に e-Gov法令検索で確認した条文です。検査項目の詳細は水質基準に関する省令の表によります。実施の体制と記録の残し方は、所在地を管轄する保健所にご確認ください。
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- 特定施設の設置届
- 数・防止方法の変更届
- 氏名変更・廃止の届出
- 承継の届出
一次情報の確認先
このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。