記録が無いと言われたら、
まず調査を1回入れる

「ねずみ等の防除の記録は」と聞かれて出てこない。前任者が辞めて引き継いだら何も残っていない。そのとき最初にやるのは駆除の手配ではなく、調査の手配です。条文が求めているのは6か月以内ごとに1回の調査で、措置はその結果にもとづいて行うものだからです。頼む先も決まっています(下に書きました)。

いま何をすればよいか(この順です)
①登録を受けた業者に調査を1本入れる(建築物ねずみ昆虫等防除業。次の章で見分け方)
②調査報告書を受け取って保管する。これが「記録」になります
③報告書にもとづいて、必要なら措置(薬剤・封鎖)を行う
④次回を6か月以内に予約する。前回から6か月を超えてはいけません
出たときだけ駆除を頼んでいた場合も、①から入れば立て直せます。

本サイトは条文と公表資料の整理です。実施の体制・記録の残し方・立入検査の運用は自治体ごとに異なります。この建物で何がどこまで必要かは、所在地を管轄する保健所(環境衛生担当)に確認してください。業者の選定は、下に書いた登録の有無から見ていくのが早いです。

誰に頼むのか(登録を受けた業者かどうか)

建築物衛生法第12条の2は、次の8つの事業について「その営業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けることができる」と定めています。登録の有効期間は6年です(同条第4項)。

第12条の2第1項が挙げる8事業(条文の文言のまま)

号条文の文言通称
一建築物における清掃を行う事業建築物清掃業
二建築物における空気環境の測定を行う事業建築物空気環境測定業
三建築物の空気調和用ダクトの清掃を行う事業建築物空気調和用ダクト清掃業
四建築物における飲料水の水質検査を行う事業建築物飲料水水質検査業
五建築物の飲料水の貯水槽の清掃を行う事業建築物飲料水貯水槽清掃業
六建築物の排水管の清掃を行う事業建築物排水管清掃業
七建築物におけるねずみその他の人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物として厚生労働省令で定める動物の防除を行う事業建築物ねずみ昆虫等防除業
八建築物における清掃、空気環境の調整及び測定、給水及び排水の管理並びに飲料水の水質検査であつて、建築物における衛生的環境の総合的管理に必要な厚生労働省令で定める程度のものを行う事業建築物環境衛生総合管理業

出典:建築物における衛生的環境の確保に関する法律 第12条の2第1項(e-Gov法令検索で2026年9月17日に確認)。

ここが使いどころです。条文は「登録を受けることができる」です。登録は義務ではありません。登録が無くても営業はできます。だからこそ、登録を受けているかどうかが業者を見分ける材料になります。第12条の2第2項は、登録には「機械器具その他の設備」と「その事業に従事する者の資格」が厚生労働省令の基準に適合していることが要る、としています。設備と人を都道府県が見た、という意味です。

見積りを取る前に、この2つをそのまま聞いてください。

業者に先に聞く2つ

聞く言葉この答えなら要注意
「都道府県知事の登録を受けていますか。登録番号を教えてください」「登録は不要です」とだけ答え、番号を出さない
「登録の有効期限はいつまでですか」(有効期間は6年)期限を把握していない。更新していない

登録業者の一覧は、都道府県や政令市の環境衛生担当課が公表しています。保健所に「登録業者の一覧はありますか」と聞けば出てきます。

このページの内容
  1. 誰に頼むのか
  2. 「ねずみ等」に何が入るか
  3. 6か月以内ごとに1回、統一的に
  4. 調査で見る4つのこと
  5. 使える薬剤は限られている
  6. 建物側で監督するのは誰か
  7. よくある取りこぼし
  8. 確認に使った一次情報

「ねずみ等」に何が入るか

施行規則第4条の4が定義しています。

「令第二条第三号の厚生労働省令で定める動物は、ねずみ、昆虫その他の人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物(以下「ねずみ等」という。)とする。」

条文が挙げているもの(施行規則第4条の4)

区分条文の文言
① ねずみねずみ
② 昆虫昆虫
③ その他人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物

出典:建築物衛生法施行規則第4条の4。③があるので、ねずみと昆虫だけに限られません。

「人の健康を損なう事態を生じさせるおそれ」が基準です。不快なだけの生き物は、条文の文言からは外れます。逆に、衛生害虫であれば昆虫以外も入ります。

この建物が特定建築物に当たるかは延べ面積3,000平方メートルが分かれ目です。→ 事務所が3,000㎡を超えたら保健所に届出

6か月以内ごとに1回、統一的に

第4条の5第2項第1号の要点は3つです。

条文が求めていること

「統一的に」という言葉が、この条文の性格を表しています。ねずみは建物の中を移動します。1フロアだけ調べても、どこから来ているかは分かりません。

大掃除にも同じ「統一的に」が使われています。第4条の5第1項は「日常行うもののほか、大掃除を、六月以内ごとに一回、定期に、統一的に行うものとする。」としています。→ 大掃除は6か月以内ごとに1回

調査で見る4つのこと

条文は調査の対象を列挙しています。

「ねずみ等の発生場所、生息場所及び侵入経路並びにねずみ等による被害の状況について」

調査の対象(施行規則第4条の5第2項第1号)

対象見るもの
発生場所どこで増えているか
生息場所どこに棲みついているか
侵入経路どこから入ってきているか
被害の状況何にどんな被害が出ているか

出典:施行規則第4条の5第2項第1号。4つとも「調査の結果に基づき……必要な措置を講ずる」ための材料です。

4つのうち「侵入経路」がいちばん見落とされます。駆除だけを繰り返しても、入口が開いていれば戻ってきます。条文が侵入経路を調査対象に挙げているのは、そのためです。

措置は「調査の結果に基づき」行うと書かれています。調査をしていない状態で薬剤をまくのは、条文の順番と逆です。

使える薬剤は限られている

第4条の5第2項第2号は、薬剤を限定しています。

「ねずみ等の防除のため殺そ剤又は殺虫剤を使用する場合は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律……第十四条又は第十九条の二の規定による承認を受けた医薬品又は医薬部外品を用いること。」

薬機法の承認を受けた医薬品または医薬部外品に限られます。「雑貨」として売られている忌避剤や、承認を受けていない薬剤は、この条文の求めるものではありません。

薬剤を使うときに確かめること

業者に委託している場合も、使っている薬剤の区分は確認できます。見積書や作業報告書に薬剤名が書かれているはずです。

建物側で監督するのは誰か

施行令第2条第3号ロは、建築物環境衛生管理基準の一部として「厚生労働省令で定めるところにより、ねずみ等の発生及び侵入の防止並びに駆除を行うこと。」としています。

そして第4条の5第3項は、技術上の基準に従った維持管理の努力義務を定めています。

「令第二条第三号イ及びロの規定により掃除、廃棄物の処理、ねずみ等の発生及び侵入の防止並びに駆除を行う場合は、厚生労働大臣が別に定める技術上の基準に従い、掃除及びねずみ等の防除並びに掃除用機器等及び廃棄物処理設備の維持管理に努めなければならない。」

この維持管理を監督する立場の人が、建築物環境衛生管理技術者です。→ ビル管理技術者の兼任は禁止されていない

よくある取りこぼし

出たときだけ駆除を頼んでいた

条文は「六月以内ごとに一回、定期に、統一的に調査を実施し」です。調査が先です。

調査をせずに薬剤をまいていた

措置は「当該調査の結果に基づき」行うと書かれています。順番が逆です。

侵入経路を調べていなかった

調査の対象は発生場所・生息場所・侵入経路・被害の状況の4つです。

1フロアだけ調べていた

条文は「統一的に」です。建物の一部だけでは足りません。

市販の忌避剤で足りると思った

殺そ剤・殺虫剤は薬機法第14条または第19条の2の承認を受けた医薬品・医薬部外品に限られます。

ねずみと昆虫だけだと思った

第4条の4は「その他の人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物」も含めています。

前回から7か月あいてしまった

「六月以内ごとに一回」。前回から6か月を超えてはいけません。

確認に使った一次情報

2026年9月13日に e-Gov法令検索で確認した条文です。実施の体制・記録の残し方・保健所の運用は自治体ごとに異なります。所在地を管轄する保健所にご確認ください。

事務所のレイアウトと法令ガイドの記事一覧

一次情報の確認先

このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。

次に見ておくガイド