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防火管理者の選任義務は50人から。数え方は建物が決める

「うちは小さい会社だから関係ない」で済ませているケースが多いのですが、基準は従業員数ではなく収容人員です。しかも収容人員の数え方は自分では決められません。

このページの内容
  1. 選任が必要になる基準
  2. 東京都は上乗せしている
  3. 事務所は非特定用途
  4. 収容人員の数え方
  5. テナントで入っている場合
  6. 工事中の消防計画
  7. 講習はいくらで何日か
  8. 選任したら何をするのか
  9. よくある失敗
  10. よくある疑問

選任が必要になる基準

東京消防庁は、防火管理者が必要な防火対象物について次のように案内しています。

防火管理者の選任が必要になる収容人員(東京消防庁)

用途収容人員
特定用途(飲食店・物販店・病院など不特定多数が出入りするもの)防火対象物全体の収容人員が30人以上
非特定用途(事務所・工場・倉庫など)防火対象物全体の収容人員が50人以上

出典:東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」。甲種・乙種の区分は用途と規模で決まります。

ここで重要なのは、「防火対象物全体の」収容人員という点です。自社のフロアだけで数えるわけではありません。

東京都は、消防法に上乗せしている

収容人員だけを見ていると、対象なのに気づけないことがあります。 東京都には、消防法施行令とは別に、火災予防条例による上乗せがあります。 東京消防庁が公表している基準を、国の基準と並べます。

防火管理者が必要になる防火対象物(東京消防庁の公表内容・2026年9月20日確認)

区分基準根拠
社会福祉施設等を含む建物収容人員 10人以上消防法施行令(全国共通)
特定用途(劇場・飲食店・店舗・ホテル・病院など)収容人員 30人以上同上
非特定用途(共同住宅・学校・工場・倉庫・事務所など)収容人員 50人以上同上
新築工事中の建築物収容人員 50人以上同上
建造中の旅客船収容人員 50人以上同上
屋外・屋内タンク貯蔵所危険物が指定数量の1,000倍以上東京都火災予防条例55条の3(東京都の上乗せ)
指定可燃物の貯蔵施設床面積 1,500㎡以上同上
屋内駐車場50台以上同上
地階に乗降場のある車両停車場—同上

出典:東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」。下の4つは東京都の条例による上乗せで、収容人員とは別の基準です。

ここがいちばん見落とされます。 「うちの事務所は50人もいないから関係ない」と思っていても、 屋内駐車場が50台以上あれば、東京都では対象です。 収容人員の話と、駐車台数・床面積・危険物の量の話は、別々に判定されます。

そしてこの上乗せは東京都の条例なので、都外でも同じとは限りません。 本社が東京、支店が他県という場合、支店の判定は支店の所在地の条例で見ます。

なぜ市によって違うのかというと、火災予防条例は市町村(または都)の条例だからです。 消防庁長官が「火災予防条例(例)」(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号)を示していて、 各自治体はそれを参考に自分の条例を定めています。参考にする以上、同じとは限りません。

実際に確かめてみました。

防火管理者の上乗せを、他の市でも確認できるか(2026年9月21日確認)

自治体屋内駐車場50台以上などの上乗せ
東京都あり。東京消防庁が火災予防条例55条の3として公表
大阪市公表ページでは確認できず。「防火・防災管理制度について」は消防法施行令の基準のみ
横浜市条例本文では確認できず。同趣旨の上乗せ規定が見当たらない

出典:東京消防庁、大阪市消防局、横浜市火災予防条例(2026年9月21日確認)。「確認できず」は「無い」と断定するものではありません。公表されている範囲で見つけられなかった、という意味です。

だから、やることは1つです。 「(自分の市区町村名) 火災予防条例」で検索して、例規集を開いてください。 防火管理者の条は、多くの自治体で第55条前後にあります。 そこに収容人員以外の基準(駐車台数・床面積・危険物の倍数)が書かれていれば、 収容人員が足りていなくても対象です。

調べる時間がないときは、所轄の消防署に電話で「うちは防火管理者が必要ですか」と聞くのがいちばん早いです。 建物の用途・延べ面積・収容人員・駐車台数を手元に用意してからかけてください。

事務所は非特定用途

東京消防庁の区分では、事務所は非特定用途にあたります。したがって基準は50人以上です。

ただし、同じ建物に飲食店や物販店が入っていると、建物全体としては特定用途を含む扱いになることがあります。雑居ビルではよくある状況です。建物全体でどう扱われるかは、所轄消防署が判断します。

同じ「1階に店舗が入ると扱いが変わる」という分かれ方は、消防訓練の回数にも出てきます。→ 事務所の消防訓練に年2回の義務はない

なお、消防法とは別に、延べ面積3,000㎡を超えると建築物衛生法(ビル管理法)がかかります。窓口は消防署ではなく保健所です。→ 事務所が3,000㎡を超えたら保健所に届出/空気環境測定は2か月に1回

収容人員の数え方

収容人員は「そこにいる社員の人数」ではありません。消防法令で用途ごとの算定方法が定められており、床面積などから計算されます。

本サイトでは算定式を示しません。用途区分の当てはめと算定は、建物ごとに所轄消防署が判断するためです。次の手順で確認してください。

収容人員を確認する手順

  1. ① 建物の管理会社に聞く建物全体の収容人員は、すでに算定されていることがほとんどです。まずここです。
  2. ② 防火管理者がすでにいるか聞く建物全体で選任されている場合と、テナントごとに必要な場合があります。
  3. ③ 所轄消防署(予防課)に確認する自社の入居部分について、何が必要かを直接聞きます。
  4. ④ 入居時・増員時に見直すレイアウト変更や増員で、算定が変わることがあります。

本サイトは一般的な整理です。実際に必要な届出・設備・寸法は、建物の用途・規模・構造によって変わります。着工前に必ず所轄の消防署と、建物の設計を担当した建築士(または内装業者)にご確認ください。

テナントで入っている場合

ビルの一部を借りている場合、「建物全体」と「自社の入居部分」の2つの層があります。

テナントにも義務が出る場合

建物全体で防火管理者が選任されている

ビルのオーナー・管理会社が選任していることが多いです。それとは別に、テナント側にも義務が生じることがあります。管理会社に「うちは何をすればよいか」と聞いてください。

複数のテナントが入る建物

建物全体を統括する仕組み(統括防火管理者)が置かれることがあります。各テナントが個別に責任を負う部分と、建物全体で担う部分が分かれます。

入居時に何も言われなかった

言われないことと、義務がないことは別です。入居時に管理会社と所轄消防署の両方に確認してください。

増員してフロアを増やした

収容人員の算定が変わる可能性があります。フロアを増やしたときが確認のタイミングです。

選任しても、届け出なければ罰則がある

ここを落とす事業所が多いところです。消防法8条1項は防火管理者を「定めなければならない」と書き、8条2項は、定めたら遅滞なく消防長または消防署長に届け出なければならないと書いています。選任と届出は別の義務です。

防火管理でかかる罰則(消防法・2026年9月20日確認)

何をしなかったか根拠罰則
防火管理者を定めたのに届け出なかった消防法44条8号(8条2項の届出を怠つた者)三十万円以下の罰金又は拘留
「防火管理者を定めよ」という命令に従わなかった消防法42条1号(8条3項の命令に違反した者)六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金
消防計画の作成・変更命令に従わなかった消防法41条2号(8条4項の命令に違反した者)一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金

出典:消防法44条・41条(e-Gov法令検索)。44条の柱書は「三十万円以下の罰金又は拘留に処する。」、41条の柱書は「一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。」です。

金額の桁が変わるのは「命令に従わなかったとき」です。 届出漏れは30万円以下ですが、消防署から計画の作成・変更を命じられて放置すると100万円以下になります。 言い換えると、消防署から何か言われた時点で、放っておく選択肢は無くなります。

担当者が代わったときも同じです。前任者の名前のままになっていないかを、いま確認してください。

工事のあいだにも計画が要ることがある

見落とされやすいのがここです。内装工事の期間そのものにも、消防上の管理が求められることがあります。

東京消防庁は「工事中の消防計画」という仕組みを案内しており、工事中の消防計画作成(変更)届出書という様式も公開しています。工事のあいだは避難経路が塞がれたり、火気を使う作業が入ったりするため、通常とは別の管理が必要になるという考え方です。

工事期間中に問題になりやすいこと

該当するかどうかは工事の規模と建物によります。着工前に所轄消防署に確認してください。施工業者が把握していることも多いので、見積もりの段階で聞いておくと確実です。

講習はいくらで、何日かかるのか

「必要だ」と分かったあと、次に詰まるのがここです。防火管理者になるには講習を受けます。主催は消防本部や自治体で、民間に払うものではありません。大阪市の公表内容を例に置きます。

講習日数手数料
甲種防火管理新規講習2日間8,500円
乙種防火管理講習1日間6,500円
甲種防火管理再講習半日5,000円
防災管理新規講習1日間6,500円
防火・防災管理新規講習(同時に取る)2日間10,000円
防火・防災管理再講習半日5,000円

出典:大阪市「防火・防災管理等講習のご案内」(2026年9月17日確認)。テキスト代は手数料に含まれます。金額・日数は実施主体(消防本部・都道府県の防災協会・一般財団法人日本防火・防災協会など)によって異なります。お住まいの地域の消防本部の案内を見てください。

費用より、日数のほうが効きます。甲種は2日間です。担当者が2日職場を空けることになります。しかも定員があり、満席になれば締め切られます。「必要だと分かってから探す」と、直近の回は埋まっていることがあります。
選任が必要になると分かった時点で、先に講習の日程を押さえてください。建物を使い始めてから慌てても、次の回まで待つことになります。

なお防火と防災の両方が必要な建物なら、同時に取れます。上の表の「防火・防災管理新規講習」が2日間10,000円で、別々に取るより日数も金額も少なくて済みます。→ 防災管理者は防火管理者とどう違うか

選任したら何をするのか

防火管理者は資格を取って終わりではありません。選任の届出と、消防計画の作成・届出が伴います。

選任にともなう主な手続き

いちばん多い抜けが最後の項目です。選任した人が退職したまま届出を出していない、という状態は珍しくありません。

レイアウト変更にあわせて什器を見直す

収容人員や避難経路に影響する配置は、所轄消防署と管理会社にご確認ください。

掲載内容は各社公式サイトの公表値です。効果には個人差があります。広告(PR)を含みます。

よくある失敗

従業員数で判断する

基準は収容人員です。算定方法が別に定められています。

自社フロアだけで数える

基準は「防火対象物全体の収容人員」です。

管理会社が選任しているから不要だと思う

建物全体とテナントで、責任の層が分かれることがあります。

選任者が退職しても届出を出さない

解任・選任の届出が必要です。

消防計画を作って終わりにする

訓練と点検の実施までが計画です。

よくある疑問

収容人員は自分で計算できますか。

消防法令に算定方法の定めがありますが、用途区分の当てはめが前提になります。建物の管理会社が把握していることが多いので、まずそちらに確認してください。最終的な判断は所轄消防署です。

甲種と乙種はどう違いますか。

東京消防庁は、甲種・乙種の区分が用途や規模によって決まると案内しています。どちらが必要かは所轄消防署にご確認ください。講習の日数と内容が異なります。

小さなオフィスでも講習を受けたほうがよいですか。

義務がなくても、避難経路の管理と初期消火の知識は実務上役に立ちます。ただし本サイトは受講を勧めるものではありません。必要性は所轄消防署にご相談ください。

在宅勤務が多く、出社人数が少ない場合はどうなりますか。

収容人員は実際の出社人数ではなく、法令の算定方法によります。「今日は少ないから」は基準になりません。

建物にすでに防火管理者がいます。うちは何もしなくてよいですか。

管理会社に確認してください。建物全体を統括する仕組みと、テナント個別の義務は別に整理されることがあります。

事務所のレイアウトと法令ガイドの記事一覧

一次情報の確認先

このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。

次に見ておくガイド